「外国人労働者の失踪」
外国人労働者の雇用に関係しているあなたが、決して無視できない言葉だと思います。
・外国人労働者は何故失踪するのか?
・外国人労働者の失踪を防ぐために会社が取り組むべきことは?
について、実際に失踪中の外国人労働者の相談も数多く受けている行政書士からヒアリングした内容を基に、社会保険労務士の岡本雅行(Suncha社会保険労務士事務所代表)がお答えします。
外国人の雇用をこれからお考えの方や、採用した外国人の離職を防ぎたいと考えている方が、知っておくべきリアルな内容です。
また、実際には役に立って欲しくはありませんが「外国人労働者が失踪した時の初期対応」も記します。
どうぞ最後までご覧ください。
↓この記事を書いた人↓
岡本雅行(社労士)の自己紹介と職務経歴
外国人労働者が失踪する理由3選
では早速、結論からお伝えします。
実際に失踪した外国人労働者が語った原因のトップ3は、下記の通りです。
- 各種ハラスメントを受けた
- 業務に対する不満
- 金銭トラブル
以下、行政書士のT先生からヒアリングした、具体的なストーリーをご紹介します。
尚、失踪した労働者の特定等を防ぐためにヒアリングした行政書士の名前は匿名としております。ご了承いただきます様お願い申し上げます。
行政書士 T先生 紹介
国際業務専門の行政書士事務所を都内で開業。
年間400件程度のビザ申請業務を実施。事務所には複数の外国人労働者が働いています。
彼らのネットワークから、失踪した外国人の相談相手になる実務経験が豊富な専門家です。
①:各種ハラスメントを受けた
失踪という究極の選択をせざるを得なかった外国人労働者がその原因として語った理由で最多だったは
「各種のハラスメントを受けた」でした。
特に、上司や周りの人からの「パワーハラスメントを受けていた」という訴えが最多でした。
身体的な暴力を受けていたという人もいますが、それよりも多いのは「言葉の暴力に耐えらえなかった」という主張です。
この主張に対し、行政書士のT先生は、
失踪した当事者の発言なので、100%事実として受け取ることはできないかもしれないが、全てが作り話ではないと思う。
という見解をお持ちでした。
危険な作業に従事している外国人労働者に、瞬時に(考える間もなく)激しい言葉で注意したケースや 安全教育上繰り返しの注意が必要だったケースもあるのでしょうが、
受け手には
- 何度も同じことを繰り返し(不必要に)言われ続けた。
- 人格否定の汚い言葉で罵られた。
と捉えられてしまった様です。
また、その他にも
言葉の問題もありお互いの理解が
不足している時点で
「厳しい指導」を受ける
▼
“恐い人”という印象を持ってしまい、
コミュニケーションに消極的になる
▼
伝えるべき内容がきちんと伝わらず、
危険な作業を繰り返す
という悪循環に陥ってしまうケースもありました。
②:業務に対する不満
「業務が(事前に言われていたものと違い)辛すぎた」という理由も多かったです。
業務内容についての事前の情報提供に力を入れている企業が増えており、
事前に聞いてた業務内容と異なる業務に従事させるケースは少なくなっていますので
業務に不満を感じるか否かは、労働者側の問題が大きいのかもしれません。
行政書士のT先生は、この点に関して
・辛い業務が未来永劫、果てしなく続く
・改善提案も絶対に聞き入れられない
と感じたことが、失踪の引き金になることは多いです。
とコメントされています。
業務そのものではなく、外国人労働者が「将来への希望を抱けなくなる」ことが、
失踪に結びついている様です。
③:金銭トラブル
外国人労働者が失踪するのは、「低賃金」という理由が一般的です。
実際、2018年11月に公表された法務省の調査によると、失踪した外国人技能実習生のうち、67.2%が「低賃金」を理由に挙げています。
↓参照先↓
日本経済新聞|技能実習生の失踪動機「低賃金」67% 法務省調査
ところが、あなたが実務において「低賃金」の他にも注意すべきなのは、外国人労働者が「金銭トラブル」に巻き込まれてしまうケースが多いということです。
具体的には、
パチンコやギャンブルにはまったり、買い物(浪費)癖が身についてしまった結果、
借金が膨らみ、最終的には違法な貸付業者からお金を借りてしまうケースがあります。
特に、車以外の異動手段が少ない地方に勤務していて、車や免許を持った知り合いが少ない場合には、娯楽が限られ、パチンコや公営ギャンブルにハマり易くなる様です。
このように、実務経験豊富な専門家の意見を踏まえると、「低賃金」だけでなく「金銭トラブル」にも良く良く注意を払う必要があります。
また、金銭トラブルに巻き込まれてはいないものの、さまざまな理由で当初の計画以上に支出が多くなり
借金返済の目途が立たなくなり、より高い収入を得るために、リスクを承知の上で、
失踪するケースもあります。
外国人労働者の失踪を防ぐために会社が取り組むべきこと
では、具体的にどうすれば良いのか?
専門家の立場から、実際に効果的だった具体的な解決方法をお伝えします。
①:複数のコミュニケーションルートを確保する
「コミュニケーションを確保する」
対策はこの一言に尽きると言っても過言ではありません。
具体的な手段については本稿では割愛いたしますが、
一つだけ記載します。
「複数のコミュニケーションルートを確保する」ことに注力いただければと思います。
- 職制に基づくルート
- 職場内の非公式なルート
- 職場内の他の外国人労働者とのルート
- 登録支援機関等、提携先を通じたルート
- 出身国のコミュニティを通じたルート
- 居住地のコミュニティを通じたルート
等々、できるだけ多くのコミュニケーションルートを確保する様に努めましょう。
一つひとつの関係性は薄くても、複数のルートを持つことのメリットは大きいです。
②:外国人労働者のメンター(相談役)を設置する
外国人労働者ひとり一人にメンター(相談役)を設置することを目指しましょう。
外国人労働者を何人雇用しているかにより変わりますが、メンターは、一定以上の社歴を有して、ある程度の意思決定権限を有している人が好ましいです。メンターが受け持つ外国人労働者が多すぎて、外国人労働者へのフォローがおろそかになるのは本末転倒となりますので、ご注意ください。
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外国人労働者のメンタルヘルス|採用で成功したい企業が知っておくべき事
③:採用前(選考時点)&入社初期の情報提供をしっかりと行う
入社後に取り組んでもらう業務内容や職場環境について、採用前(選考時点)にきちんと情報提供することが大切です。実施済の企業も多いと思いますが、既に働いている外国人労働者からの意見を反映させる等、情報提供内容をブラッシュアップすることも大切です。
また、入社初期の社員に対しては、仕事内容や職場環境について、外国人労働者の認識を確認し、相違がある際は、しっかりと補正しましょう。
外国人労働者が失踪した時の初期対応
外国人労働者と連絡がつかなくなった場合、「失踪か否かの特定」がまず必要です。
- 同僚や友人等に状況を確認する
- メールや電話等で連絡を試みる
- 住んでいた部屋に実際に訪問して状況を確認する
等、可能性のある全てのルートを使って、状況把握をしましょう。
残念ながら、失踪したことが明確になった際は、
- 管理団体や支援機関等に連絡し
- 警察にも通報し
然るべき対処を行ってください。
失踪した外国人労働者の対応だけでもやるべきことはたくさんありますが、他の外国人労働者をフォローすることも非常に大切です。失踪した事実をしっかりと伝え、第二の失踪者が出ない様にコミュニケーションを密に取ります。また、失踪した外国人労働者が勤めていた職場の社員(日本人労働者も含む)へのフォローもしっかりと実施して下さい。
失踪者が現れたことを会社がどう捉えて、失踪者が所属していた職場の影響を最小限に留め、中期的には失踪者を二度と出さないために、会社が何に取り組むかを明確に示すことが大切です。
まとめ
外国人労働者が失踪する原因についてご確認いただけたでしょうか?
あなたはどの様に感じて、失踪を防止するために何をすべき!と感じましたか?
特に新しい情報はなかったし
うちの会社ではやるべきことは
やっているよ
と感じた方も多かったかもしれません。
まさに、その通りです。失踪というショッキングな事態を防ぐための会社の取り組みは
「特別なことではなく、あたりまえのことを徹底する」ことに尽きるのです。
でも、もしあなたが
- 知識としては理解できたけれども、
具体的アクションが今一つわからない - 是非取り組んでみたいとは思うが、
業務もあり、正直、そこまで手が回らない - 社長や上司が理解してくれるかが不安
等のお悩みがある場合は、ぜひ、私までご連絡ください。
あなたとお話しできるのを楽しみにしております。
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